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酔っ払った時のお話。やきもきしてる律っちゃんが好きです。
律っちゃんは常に高野に振り回されてる感じがいい。
拍手ありがとうございます~!嬉しいです(*´∀`)
のんびりですがぼちぼち書いていけたらいいなと思ってます。
どうしようどうしようどうしよう、と。
まるで呪詛のように延々と駆け巡る自分への問い掛けに答えは出てこなくて、ただひたすら自己嫌悪に陥る事しか出来ない。
腰に走る鈍痛が答えを導いているような気もしたけれど、きっとどこかにぶつけたのだと思い込む事にした。そうでなければ正直やってられない。
―…昨日、高野の部屋で酒に酔い潰れてしまった。
空腹の状態だったのと、ハイペースで飲んでしまった為に途中からの記憶がまるで無い。酒は強い方では無かったが、記憶を無くすなんて事は初めてだ。
仕事の話をしていたのは薄っすらと覚えているけれど、それ以降何があったのか分からない。思い出してはならないような気もするが。
全てが曖昧な記憶の中、ただはっきりと覚えているのは、随分と懐かしい夢を見た事だけ。
高校時代、高野と付き合っていた頃の思い出。どんな夢だったのかは思い出せないけれど、ふわふわと心が浮つくような心地よさを感じる夢だった。
もうすっかり忘れていた筈だったし、正直ここ数年は思い出す事もなかったというのに、高野に再会してからは昔の夢を見る事が多い。
馬鹿正直に真っ直ぐだった恋心。今となっては恥ずかしいけれど、きっと同じ気持ちになんて二度となれないだろうから、ある意味羨ましくもある。
「…あの頃は、ずっと一緒に居られるって本気で思ってたんだよな」
シャワーを浴び、すっかり濡れた髪をタオルで乱雑に拭いながら息を落とした。
綺麗な思い出ばかりが残っているけれど、きっとそれだけではなかった。彼が異性から好意を抱かれる事が多かったのも、恋人がいた回数が多かったのもずっと見ていたから知っていた筈だ。
その時はどんな気持ちだったのか、もう思い出す事は出来ないけれど、きっと辛かったんじゃないのかとは思う。
それでも好きでたまらなくて、何年も片思いをしていたというのだから自分の事なのに関心してしまった。
普通なら諦めるだろう、そう思うのは二十も半ばになった今だからこそ思う事なのかもしれない。随分とつまらない人間になったという自覚だけはある。
「…会社、行くか」
けれどこのまま考えていても仕方ない。どんどん思考が暗い方向へといってしまうような気がして気持ちを切り替えるべく冷水で喉を潤した。
散らかったままの部屋を横断して、洗濯したままの服を拾い上げる。
掃除しないと、そう思い続けてもう何日が経過しただろうか。
「…おはようございます」
「おはようも何もさっきまで、」
「おはようございます!」
あまりにも最悪な事態に、今出たばかりの部屋へと引き戻りたくなってしまった。
何か言いたげな視線を感じてはいたが、それには気が付かない振りをして鞄から鍵を取り出しては肩を落とす。
どうして、こういう時に限って出社時間が被るというのか。
同じ会社に勤めているとはいえ今まで出社時間が被る事はあまりなかったというのに、何もこんな時にと頭が痛くなる。間が悪いにも程があるというものだ。
どうせ会社では嫌でも顔を合わせなければならなくなるのだから、せめて少しくらいは気持ちの整理をする時間をくれたっていいのにと、妙に意識してしまって顔も見れない。目を合わせられなくて、なるべく視界にすら入れないようにと必死になっていた。
先程からずっと寄せられている視線が気になってたまらなかったけれど、あえて気付かない振りをして乱雑に鍵を閉める。
そしてそのまま駆け足気味に高野の横を通り過ぎようとした―その瞬間。
高野がに腕を引かれ、そのまま引き寄せるように抱きとめられていた。
「…あの、手、離して下さい」
「お前さ、体大丈夫なの」
その瞬間腰に腕を回されて、小野寺の体に軽く痛みが走る。決して平気という訳ではなかったけれど、これしきの事で会社を休むなんて出来る筈もない。
それに、こういう気遣いは逆に考えたくもない事が現実味を帯びてしまうから、たまらなく嫌だ。こういう時は放っておいてくれて構わないのに、どうしてこの男はいちいち構ってくるのだろうか。
けれど心配する声が優しいものだったから、強く突っ撥ねる事も出来なかった。
普段は遠慮なく怒鳴りつけてくる事ばかりで、こういう態度を向けられる事には正直慣れない。その上身長差のせいで声が耳に丁度掛かるのがくすぐったくて、この上なく居心地が悪い。
不覚にも胸がばくばくと煩く音を立てている自分自身に耐えられなかった。
「…っ!」
結局どう反応する事も出来ず、振り切るように体を押しのけて拘束から逃れた。何か言った方がいいのかと悩んだものの、何を返したらいいのかも分からない。
結局その問いには答えないまま、逃げるようにその場から立ち去る事しか出来なかった。